※お試しでラノベも書いてみます…ちなみに私の学生時代の通信簿で、国語の成績は平均2くらいでした。昔読んだラノベの感覚でやっていく。
世界樹から光が消えた日のことは覚えている。ニュースにもなって…祈りでご飯が降ってこなくなったのも、その日からだった。
たしか、最初に暴動を起こしたのは図体のデカイ竜ども…怒ったら火を吐くのは知ってたけど、まさかそれを人に向けるなんて…当時は信じられなかった。
デカイ奴…中でもずる賢い奴らは、アタシみたいな小さい子…小さい動物を狙っているみたいだった。
最初は他人事かなと思ってたけど、家族が目の前で襲われて、食べられるところを見ちゃって…
その日からは…地獄だった。
絶望歴-13/4/9/14:14
※絶望歴とは、世界樹から光が消えた日からの暦。神無歴とも呼ばれる。
[血塗れ兎アジト内]
太陽の位置と影で、時間と方角がわかる…今ではただ目障りなだけの、枯れた世界樹。空中に浮いてる謎の2本のワッカ。皮肉にも、これらが目印となって、ほとんど道には迷わない。
そんなことを教えてくれたのは、年下の男の子。レイブンだった。
ヒトは成長が早いな…弟だと思って油断してたら、もうアタシより大きくなって、知恵もついて。
「俺は将来兵士になって、みんなを守れるようになる」
「まだ10才だろ?アタシは…いくつだろう…あの日から、13年たったんだっけ…」
「あぁ、なんとなくネガティブな話題になりそうな…俺には、生まれる前の世界のことなんてどうでもいいよ。デーモンは…長生きな分年より臭い!」
「昔はよかったな…」
レイブンは人間の男の子。人間属は成長が早くて繁殖力も高くて、兵士に向いているらしい。まるで替えが利きやすい使い捨てに聞こえるかも知れないけど…アタシみたいな長寿種…成長の遅い種族の子たちを、率先して助けてくれる。
彼はまだ子供だけど、たまに大人たちと一緒に外に行って訓練をする。早朝から昼までは、狩りや探検をしてるのだ。
そんな彼の話を聞くのは結構楽しい。今外はどうなってるのか…わかるから。
アジトはフェンスで囲われてて、見張りもいて…たまに高台に登って、外を見せてもらえるけど、ひどいもんだ。
一面砂ぼこりと瓦礫、枯れ木。でも…たまに生きた花とかが咲いてるらしい。
昔、小さい時は花とか何処にでもあったけど…
「早く弦を引け!的当ての時間じゃ!」
「いいよ。キィキィ」
…
アタシたちはよく子供三人組で行動してる。
サヨ、普通のデーモン。
男の子のレイブン、力持ち。人間。
あと…アホのキィキィ。大飯ぐらいで、遊んでばっか。なんか、デザートエルフ…だったかな?
アタシたちは、砂漠の真ん中で「血塗れ兎」っていう団でしのぎ合ってる。親代わりの大人たちは優しい。生き残ることと平和を第一に、みんなで助け合ってる。
なんで血塗れ兎って名前なのか?大人に聞くと、「初見でビビってもらった方が都合がいい」かららしい。
ジェーン(お話好き)によると、この団は小さくて将来性がないから、他の大人数の団と仲良くなって合併するとのこと。
真っ赤な兎の旗…アタシを救ってくれた、この団とお別れするのは、悲しい。レイブンもそう言ってた。
この猿(キィキィ)は、というと…
「新しい団になっても、的当て最強はワシ!今のうちに練習にいそしむのじゃ!」
団の解体とかお構い無し、いつだってそう。目の前のご飯と的当てが全て。
「なんで的当てばっかしてんの?」
「自分でメシを捕るためじゃ?早く大人になって、外に出られんかなぁ…」
「はぁ…」
エルフって、変なやつ多いイメージある。
「ボウガンを射つより、弦を自力で引く練習をしなよ!」
「前に一日中引っ張ったけど、固くて無理じゃった!!」
えぇ…。
キィキィは午後になると、的当てを延々とやりだす。
レイブンは訓練が終わったあと、キィキィのボウガンの弦引き係をずっとやってる。
当のキィキィは夢中で的に射つけど、正直下手。こんなのを日が沈むまで付き合ってるレイブンは…優しいけど、普通こんな戯れ事に、休憩時間をずっと使うなんて、ありえない!
二人きりで話したいこととか、あるのに。
そう…いつも三人組で行動してるが、だからといって仲が良いと言うことではない。
良いことを思い付いた。
「ねぇ!キィキィ」
「なんじゃ?」
「次の射的で真ん中に当てれたら、夕食の缶詰めあげる!外れたら逆ね!」
「ほぅ…面白い。」
我ながら良い提案だ。こいつの射的のブルズアイ(真ん中)率は、だいたい10%くらい。食いしん坊だし、これで外したら、落ち込んでしばらくは…
「サヨ…倍プッシュじゃあ…」
「は?なに?」
「勝てば一週間、缶詰めをもらい続ける。無論負ければ逆じゃ!!!!」
「は?きも」
いたずらに笑いそう提案するキィキィ。
寒気、鳥肌がたつ。コイツはこういうところがあるから、嫌いだ。なんてバカなんだ!
嫌がらせのための賭けで、そんな大きなリスクを負うなんて…
「レイブン、弦を引け」
「あのさぁ…薄々気づいてたけど、二人って仲悪い?」
「いやぁ~?」「否」
絶対コイツは、アタシを嫌ってる。レイブンと仲良くするのを邪魔してるんだ。
「いいよ、受けてたつ」
挑発のつもりか?大丈夫だ、勝率は圧倒的にアタシのが高い!…不安になってきた。
いや、その心をへし折ってやる。一週間の食料と、レイブンとのお喋りタイムはアタシのものだ…やっぱり、不安になってきた。
「サヨ、ありがとうなのじゃ」
「?」
「今のワシに足りないものは、リスクじゃ。世界はこの上なくハード…当たれば得られ、外せば全てを失う…一矢一射、その全てに賭ける。All or Nothing bet!!」
「サヨ、取り消した方が…」
パスッ
絶望歴-13/4/9/18:00
明日、ジェーン(お話好き)と護衛で外交に行くと、夕食の時間を焚き火を囲んで、リーダーから発表があった。
食料の管理をしているのはリーダー。倉庫から缶詰めと乾パン、水を運ぶ。
受け取る際リーダーに事情を話して、これは喧嘩やいじめではなく正当な賭けの結果だ、と伝えておく。
「バカなことをしたな」
アタシの夕飯は向こう一週間、主食と水だけ。
焚き火を憎悪の炎に例え、キィキィを睨み付ける。しかし、罪悪感もないような屈託のない笑顔で缶詰めを開ける当人。
「悪いな、ケケケ」
「サヨ、これ」
レイブンが缶詰めの中身を半分、分けてくれた。
彼が幼い頃から、自分を犠牲に何かを人に譲ったり、施しをする嫌いがあるのは知ってた。かといって、今回もそれを期待してた訳じゃない。
「そんなに優しいんじゃ、兵士になれないね」
「俺は…」
少し目をそらした。やっぱり惜しいんじゃないかな?嫌われないように断ろうか…
「どっちが負けても、そうするつもりだった?」
「そういう意地悪やめなー?」
どこか照れてるような、
全く期待させやがって。
風が涼しい、食事も…少ない分ありがたみがって美味しい。それに今はなんだか負けた気がしない。
所詮この世は一切皆苦。地獄の沙汰も、涼やかな風が一時でも吹けば、快と心得よ。