[お試し投稿]End of Eden外伝 サヨ

※お試しでラノベも書いてみます…ちなみに私の学生時代の通信簿で、国語の成績は平均2くらいでした。昔読んだラノベの感覚でやっていく。

 

 

世界樹から光が消えた日のことは覚えている。ニュースにもなって…祈りでご飯が降ってこなくなったのも、その日からだった。

たしか、最初に暴動を起こしたのは図体のデカイ竜ども…怒ったら火を吐くのは知ってたけど、まさかそれを人に向けるなんて…当時は信じられなかった。

デカイ奴…中でもずる賢い奴らは、アタシみたいな小さい子…小さい動物を狙っているみたいだった。

最初は他人事かなと思ってたけど、家族が目の前で襲われて、食べられるところを見ちゃって…

その日からは…地獄だった。

 

※絶望歴とは、世界樹から光が消えた日からの暦。神無歴とも呼ばれる。

 

 

[血塗れ兎アジト内]

太陽の位置と影で、時間と方角がわかる…今ではただ目障りなだけの、枯れた世界樹。空中に浮いてる謎の2本のワッカ。皮肉にも、これらが目印となって、ほとんど道には迷わない。

そんなことを教えてくれたのは、年下の男の子。レイブンだった。

ヒトは成長が早いな…弟だと思って油断してたら、もうアタシより大きくなって、知恵もついて。

「俺は将来兵士になって、みんなを守れるようになる」

「まだ10才だろ?アタシは…いくつだろう…あの日から、13年たったんだっけ…」

「あぁ、なんとなくネガティブな話題になりそうな…俺には、生まれる前の世界のことなんてどうでもいいよ。デーモンは…長生きな分年より臭い!」

「昔はよかったな…」

レイブンは人間の男の子。人間属は成長が早くて繁殖力も高くて、兵士に向いているらしい。まるで替えが利きやすい使い捨てに聞こえるかも知れないけど…アタシみたいな長寿種…成長の遅い種族の子たちを、率先して助けてくれる。

彼はまだ子供だけど、たまに大人たちと一緒に外に行って訓練をする。早朝から昼までは、狩りや探検をしてるのだ。

そんな彼の話を聞くのは結構楽しい。今外はどうなってるのか…わかるから。

アジトはフェンスで囲われてて、見張りもいて…たまに高台に登って、外を見せてもらえるけど、ひどいもんだ。

一面砂ぼこりと瓦礫、枯れ木。でも…たまに生きた花とかが咲いてるらしい。

昔、小さい時は花とか何処にでもあったけど…

「早く弦を引け!的当ての時間じゃ!」

「いいよ。キィキィ」

 

アタシたちはよく子供三人組で行動してる。

サヨ、普通のデーモン。

男の子のレイブン、力持ち。人間。

あと…アホのキィキィ。大飯ぐらいで、遊んでばっか。なんか、デザートエルフ…だったかな?

 

アタシたちは、砂漠の真ん中で「血塗れ兎」っていう団でしのぎ合ってる。親代わりの大人たちは優しい。生き残ることと平和を第一に、みんなで助け合ってる。

なんで血塗れ兎って名前なのか?大人に聞くと、「初見でビビってもらった方が都合がいい」かららしい。

 

ジェーン(お話好き)によると、この団は小さくて将来性がないから、他の大人数の団と仲良くなって合併するとのこと。

真っ赤な兎の旗…アタシを救ってくれた、この団とお別れするのは、悲しい。レイブンもそう言ってた。

この猿(キィキィ)は、というと…

「新しい団になっても、的当て最強はワシ!今のうちに練習にいそしむのじゃ!」

団の解体とかお構い無し、いつだってそう。目の前のご飯と的当てが全て。

 

 

「なんで的当てばっかしてんの?」

「自分でメシを捕るためじゃ?早く大人になって、外に出られんかなぁ…」

「はぁ…」

エルフって、変なやつ多いイメージある。

「ボウガンを射つより、弦を自力で引く練習をしなよ!」

「前に一日中引っ張ったけど、固くて無理じゃった!!」

えぇ…。

 

キィキィは午後になると、的当てを延々とやりだす。

レイブンは訓練が終わったあと、キィキィのボウガンの弦引き係をずっとやってる。

当のキィキィは夢中で的に射つけど、正直下手。こんなのを日が沈むまで付き合ってるレイブンは…優しいけど、普通こんな戯れ事に、休憩時間をずっと使うなんて、ありえない!

二人きりで話したいこととか、あるのに。

そう…いつも三人組で行動してるが、だからといって仲が良いと言うことではない。

 

 

良いことを思い付いた。

「ねぇ!キィキィ」

「なんじゃ?」

「次の射的で真ん中に当てれたら、夕食の缶詰めあげる!外れたら逆ね!」

「ほぅ…面白い。」

我ながら良い提案だ。こいつの射的のブルズアイ(真ん中)率は、だいたい10%くらい。食いしん坊だし、これで外したら、落ち込んでしばらくは…

「サヨ…倍プッシュじゃあ…」

「は?なに?」

「勝てば一週間、缶詰めをもらい続ける。無論負ければ逆じゃ!!!!」

「は?きも」

 

いたずらに笑いそう提案するキィキィ。

寒気、鳥肌がたつ。コイツはこういうところがあるから、嫌いだ。なんてバカなんだ!

嫌がらせのための賭けで、そんな大きなリスクを負うなんて…

「レイブン、弦を引け」

「あのさぁ…薄々気づいてたけど、二人って仲悪い?」

「いやぁ~?」「否」

 

絶対コイツは、アタシを嫌ってる。レイブンと仲良くするのを邪魔してるんだ。

「いいよ、受けてたつ」

挑発のつもりか?大丈夫だ、勝率は圧倒的にアタシのが高い!…不安になってきた。

いや、その心をへし折ってやる。一週間の食料と、レイブンとのお喋りタイムはアタシのものだ…やっぱり、不安になってきた。

「サヨ、ありがとうなのじゃ」

「?」

「今のワシに足りないものは、リスクじゃ。世界はこの上なくハード…当たれば得られ、外せば全てを失う…一矢一射、その全てに賭ける。All or Nothing bet!!」

「サヨ、取り消した方が…」

パスッ

 

 

 

 

明日、ジェーン(お話好き)と護衛で外交に行くと、夕食の時間を焚き火を囲んで、リーダーから発表があった。

食料の管理をしているのはリーダー。倉庫から缶詰めと乾パン、水を運ぶ。

受け取る際リーダーに事情を話して、これは喧嘩やいじめではなく正当な賭けの結果だ、と伝えておく。

「バカなことをしたな」

 

アタシの夕飯は向こう一週間、主食と水だけ。

焚き火を憎悪の炎に例え、キィキィを睨み付ける。しかし、罪悪感もないような屈託のない笑顔で缶詰めを開ける当人。

「悪いな、ケケケ」

 

「サヨ、これ」

レイブンが缶詰めの中身を半分、分けてくれた。

彼が幼い頃から、自分を犠牲に何かを人に譲ったり、施しをする嫌いがあるのは知ってた。かといって、今回もそれを期待してた訳じゃない。

「そんなに優しいんじゃ、兵士になれないね」

「俺は…」

少し目をそらした。やっぱり惜しいんじゃないかな?嫌われないように断ろうか…

「どっちが負けても、そうするつもりだった?」

「そういう意地悪やめなー?」

どこか照れてるような、

全く期待させやがって。

風が涼しい、食事も…少ない分ありがたみがって美味しい。それに今はなんだか負けた気がしない。

 

 

所詮この世は一切皆苦。地獄の沙汰も、涼やかな風が一時でも吹けば、快と心得よ。

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